時事ドットコム:ゴッホの耳を切ったのは?=友人ゴーギャンか-英紙
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2009050600084&j1
【ロンドン5日時事】1888年12月、オランダの画家ゴッホの左耳が切り落とされた事件について、新説が登場した。通説では錯乱したゴッホが自分で切り落としたとされてきたが、友人の画家ゴーギャンが切った可能性もあるという。5日付の英各紙が伝えた。
ドイツの歴史家2人が新著で主張したもので、警察の報告書、各種証言、書簡を分析した結果、たどり着いた結論とされる。ゴッホとゴーギャンは事件の年、南仏アルルで一緒に暮らしていた。新説では、けんかの末、家を出ていくゴーギャンを追ったゴッホともみ合いになり、ゴーギャンが振ったフェンシングの剣で耳が切り落とされた。
ゴーギャンの行為についてゴッホが沈黙を守ったのは「共同生活再開に期待を抱いていたからではないか」と推測。ゴッホは、ゴーギャンへの最後の言葉で「君は沈黙している。私もだ」と述べているという。ただ、確定的証拠は示されておらず、アムステルダムのゴッホ美術館専門家らは一斉に反発している。(2009/05/06-07:39)
日本人は分類を好むのか広告手法的な意味で「何々な画家」みたいな二つ名を与えれてることって多い気がする、「謎に包まれた画家」みたいなのは三人くらい見た気がする。
ゴッホは炎の画家って言われ方をしてるのを良くみるけどこれは中々良いと思う、話がそれたけど要するにゴッホって特に謎は無かったから、いや突然叫ぶみたいな謎めいた行動は多いんだけど、とにかくこういう新説が出てきたってだけで個人的には驚きなんですよ。
時代が古い画家で全然資料が残ってなかったり最近再評価されてたりしてたら別なんだけどゴッホの場合は何かにつけて弟テオ・ファン・ゴッホに手紙を送りまくってるのがこれが知られてないけど最大級の評価をされるべきテオ・ファン・ゴッホの奥さんによって残りまくってるのでいつごろどんな気分で何してたかって大体知られてるわけだ。この新説もやっぱりテオへの手紙をもとにした説なのね。
とりあえずざっと説明をしとくと
ゴッホがアルルで自分探し
↓
通称「黄色い家」でゴーギャンと共同生活
ちなみにゴーギャン以外には拒否られる
↓
ゴーギャンと不和
↓
耳を切り落とす
確か通説がこんな感じだった思う、違ってたら言ってください。で、新説はその耳を切ったのが上にあるようにゴーギャンじゃないのかとのこと。先ずもって突くものと思われるフェンシングの剣で耳をそぎ落とすってのが可能なのかっていうので既にアレなんだけど最近『巨人』がゴヤの作品じゃ無かったってなって超びびったばかりですから。
とりあえず新説を唱えてるカウフマン氏のインタビューが以下、和訳はどこぞの名無しさんなんですけどねっ!!
>He mentions Gauguin's request to recover his fencing mask and gloves from Arles, but not the e´pe´e.
(ゴッホが弟テオに書き送った手紙によれば)いまはアルルを去ったゴーギャンは
ゴッホに対し、フェンシング用のマスクと手袋を返すように要求してきた。
「フェンシング用の剣」がそこに入ってないことに注意。
>Mr Kaufmann told the Daily Telegraph: "He writes
>that it's lucky Gauguin doesn't have a machine gun or other firearms,
>that he's stronger than him and that his 'passions' are stronger."
デイリー・テレグラフ紙の取材に対し、(新説の提唱者)カウフマン氏は
「ゴッホは書いているのです。ゴーギャンが銃をもっていなくてよかった、と。
彼がゴッホより力が強く、凶暴だったと」
>He makes reference to a French novel in which the narrator thinks
>he has killed his friend by cutting the climbing rope linking them.
(手紙の中で)ゴッホはあるフランスの小説に言及している。
ストーリーは、語り手が友人と登山の最中に、命綱を切断して死なせてしまう、というものである。
>"Afterwards, he says to himself: 'nobody has seen me commit my crime,
>and nothing can prevent me from inventing a story which would hide the truth',"
>said Mr Kaufmann. "This was a message to his brother."
「その後に、こういう台詞がくるのです。
『私が犯罪をしでかすところを見た者はいない。
私が物語をでっちあげ、真実を覆い隠すのを妨げる者はいない』
これは弟テオへのメッセージだったのです」
>He also pointed to one of Van Gogh's sketches of an ear, with the word "ictus"
>- the Latin term used in fencing to mean a hit. The authors believe
>that curious zigzags above the ear represent Gauguin's Zoro-like sword-stroke.
またカウフマン氏は、ゴッホが自ら切り落とした耳を描いたスケッチに、
ictusというラテン語を記していることを指摘する。フェンシング用語で「打撃」という意味である。
論文の2人の共著者(ハンス・カウフマンとリタ・ワイルドガンズ)は確信している。
ゴッホの耳の切断面上部の奇妙なギザギザは、ゴーギャンの怪傑ゾロ顔負けの一撃を表すものだと。
英語のっけときましたので読める人はそっちで。まあこの説ぶっちゃけこれだけが根拠らしく薄弱も良い所、このあとゴッホは切り落とした耳を馴染みの娼婦に渡すという結構な行為に出た結果サン=レミの精神病院に入ることになるんだけどゴーギャンが切り落としたとすれば告発行為、或いは道すがら口論になって耳を切り落とされたのが売春宿の近くとすれば直接的な理由になってゴッホは精神錯乱になってはいなかったとなるんだろうけどゴッホの診察カルテとか、この件で出動した警察の記録が残ってると思うから検証可能だと思う、もう少し裏を取ってから新説として欲しかった。
そして根拠とか証拠とか以前に僕の個人心情的にもあまり信じたくない、ゴッホが生前社会的に認められることが無く死後評価されたことがその後の美術史的に大きな意味があるのは間違いないけど、それって生贄ですよ。もうそれは仕方ないにしてもゴーギャンとの不和は芸術家同士の精神の衝突だと思いたい。
以下、名前を出しとくだけで頭いいと思われる小林秀雄の『ゴッホ』よりゴーギャンと別れる際のテオへの手紙
「絵の売上げの一部御送付に与り厚く御礼申し上げます。結局、私はパリに還らねばなりますまい。
ヴァンサンと私とでは、簡単に言って、平和には暮せません。気質がまるで違うからです。
私にも彼にも、仕事の為の穏やかな時間が要ります。
彼は非常に聡明な人だ。私は彼を尊敬しているし、別れるのは辛いとは思っているが、別れる事は必要なのです。
貴方の私に対するお心尽しには感謝しています。私の決心をお許しください」
やっぱりお互いに尊敬していたと思いたいね。美術分が不足気味なのでとりあえず来週の水曜辺りで西洋行ってまた日記にしたい。