2012年11月20日火曜日

char din[38]

みんな東京駅行った?立派な駅舎完成しててびっくりしたね。見ろこれぞ日本の首都駅だ!
レンガ造りってかっこいいよね、ようやくコンクリ打ちっぱなしに飽きてくれた様子で。ただすべての駅があの程度の格調持ってて普通じゃないのか!つくばエクスプレスは猛省するべき。

東京駅に最も近い美術館…は東京ステーションギャラリーだけど2番めは三菱一号館美術館かな?こっちもすっごくいい建物で、4回めの訪館ですがイチオシの美術館です。
今回はシャルダン展でした。シャルダンは18世紀のフランスの画家。聞いたことある気もするけどあんま知らねー。コピーが良かったから釣られてしまった。「シャルダン展-静寂の巨匠 優しい沈黙に、つつまれる。」
イタい気もするけど美術ファンとしてはこのコピーなんか伝わるんですよね。うるさい絵?の美術展多いっていうか…。


さて18世紀フランスといえばロココです。僕の中ではヴァトーよりも完全にラトゥール(モーリス)とかフラゴナールのイメージ。派手さMAX姫スイーツ感盛り盛りエロ全開みたいなイメージ。
それと同時代に鍋とか描いてたんだからなんかかっこいいわ。

こんなんが流行ってた時代に
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鍋の絵(出展作品)
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子供にはわからないんじゃないかなと思う。


かと言って静物ばっかり追求してたわけじゃなく風俗画なんかも描いてました。とは言えこっちも実に大人。

女性がこんなかっこしてた時代が
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こうなる(出展作品)
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まあよく見ると同じような服着てると言えなくもない。



そして最終的にシャルダンは静物画に戻ってきます。この展覧会でいう第四部からなんだけど、これが最っ高に良い!シャルダンは日常に潜む美を人類史で最も最初に発見し、描き残した人に他ならない!

「今あなた方がこれらを見て美しいと思えるとしたら、シャルダンがそれを見て美しいと思い、描いたら美しいと考えたからだ」とプルースト言葉だそうですが
今でこそプロダクトデザインなんて考え方が膾炙してるけど、当時において素朴な生活の麗しさに気づいて絵画にできたのはほんとに凄い。展覧会でも指摘されてたけどセザンヌなんて完全にシャルダンの影響下でしょう。根拠は「絵が似てる」

シャルダン「銀のゴブレットとりんご」
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セザンヌ「オレンジとりんご」(このリンゴは世界を変えた)
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もう一つ驚くのは初期から晩年にかけて画風の変化が少ないこと。土壁ブラウンな背景の静物画表現を初期から晩年まで描き続け、20代から60代まで殆ど変化無いと言っていい。かと言ってひたすら完成度を上げまくるという感じでもなく、初期の頃の不安定な感じが取り込まれるような形で完成に至っていたことには執念を感じます。

「すももの籠」
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目玉は木苺だったようですが一番好きだったのはすもも。左下のベリーの光沢と水の入ったカップがすごく綺麗でした。



シャルダン展は年明け6日まで。展示38点で大人1500円とコスパは超最悪だけど大人な皆さんにはおすすめ。ミューぽんで100円引き。
ところで今回驚いたのは三菱一号館の収蔵作品が展示されてたこと。収蔵作品あったんだー。って感じなんだけど、なんとミレー、セザンヌ、マルケ、そしてなんと2メートル越えのルドン!そういえば行けなかったけどルドンの展覧会もやってたね…。なんで常設展示してくれないのさ!!


2012年9月4日火曜日

( ゚д゚ )彡

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大物が来ました。


正直西洋絵画ファンなんて日本人がやるもんじゃないですよね。日本の美術館は海外の美術館の比較になりはしませんよ。チケットも高い!どうせなら仏像とか神社仏閣ファンやりつつ国内旅行とかの方が面白いのかも、と思ったことはあります。
とはいえそれ始めると今度は京都に行きまくらなくちゃいけなかったりで、首都圏でじっとしてるなら西洋美術ファンでも結構な世界的名作を見ることが出来ます。2008年にはコローの真珠の女とモルトフォンテーヌの思い出が同時にいらっしゃいました、2009年にはラトゥールの大工の聖ヨセフが、2010年にはドガのエトワールが来ました。どれも名画家の名作です。

とはいえここまで名を馳せる名作が来るとは、10年に1回レベルでは。
フェルメールの真珠の耳飾りの少女についてはあっちゃこっちゃで語りつくされてるし、いまさら何をかいわんやだけど、ここまで有名だと逆に新鮮味が無くなっちゃってる気がしたし、都美術館はせめーくせにすげえもん持ってきてはバーンと宣伝するせいでごっちゃごっちゃするとmixiのコミュニティでは有名ですね、そんなわけで後回しにしてましたが、もうだめだ。ここで見に行かないと一生会えないんじゃないかという恐怖に苛まれて落ち着かなかった。

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感想ですが、やっぱり良い絵でした。歩きながら、やや離れて見るしかなかったのでなんだか印象が遠くにあるんですけれど、黒・白・青・黄色が鮮やかに映えてました。「真珠の耳飾りの少女」よりは「青いターバンの少女」の方が僕は好きです。

この展覧会の恐るべき点は2点のフェルメールにおんぶにだっこ展では無い所。
ロイスダール2・パパブリューゲル2・ヴァンダイク2・ハルス3・ヤンステーン3、そしてルーベンスが2、レンブラントが6!(+1)点。これレンブラント展や。
そして合計でたったの!48点、なのにチケットは一般1600円するんだからもう色々壊れた美術展ですよ。
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レンブラントはやっぱ好きですねー、レンブラントから入ったのを思い出します。初期作品と晩年作品が両方来てたのが良かった。こっちは最晩年の自画像で近くで見ると勢いよく精密に描かれてるのが分かります。
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一番好きだったのがこれ、ヤンステーンの「親にならって子も歌う」とハルスの「笑う少年」
これぞオランダ黄金時代の美術。風俗画においては何人もこの時代の画家に並びやしませんよ(日本除く)。はっとした顔で振り返る少女も良いけれど、馬鹿笑いしてるガキの笑顔は見てて幸せになります。

マウリッツハイス美術館展は東京都美術館にて9月17日まで、行く予定の人はとにかく急いだ方がいい。最終週は平日でもヤバいぞ。
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2012年9月1日土曜日

神物語

さて前回の日記の最後、ミューぽんってアプリをちらっと書きました。
いろんな美術展の割引チケットアプリなのですが、よく見たら三菱一号美術館のエドワード・バーン・ジョーンズ展―装飾と象徴が最終日!ミューぽんは普通に有料のアプリなので使わないと損で終わるのにレーピン展で初めて使ったんですよね。しかも2012年でおしまいなので早く減価償却しないと丸損。
この展覧会、美術ファンからの評価が高かったこともあり行ってきました。二日連続美術館とか高校生以来だわ。あの頃は美術館ハシゴしたりしてた。


一般論ですが、展覧会は閉幕に近づくほど混雑します。もちろん最終日は最も混雑します。今ツタンカーメン展やってるけどあれなら最終日は入場5時間待ちでしょう、行く予定の人は早く行こう。
バーンジョーンズ展は普通に入って普通に見れましたがやっぱり結構混んでた。まあ分かるよ、
あ、○○の展覧会やってんだ行きたいけどあと一月半あるからいつでもいいや→最終日
このパターン。でもこの○○にバーンジョーンズ入れる人も結構沢山いるんだな。


バーンジョーンズはラファエル前派の画家で19世紀中ごろに活躍、これは近代です。この時代は美術史上大きな変遷がまあ色々と起きた頃です。バルビゾン派の興りとか第一回印象派展とかレアリスム宣言とか。
どの運動もそれまで散々蔑ろにされてきた世俗の世界に光を当てたもので、世俗画や静物画は一気に台頭しました。この革命にはジャポニズムも結構寄与してるんだろうなと思います。詳しい話は印象派の展覧会でも行って音声ガイドを借りてください。

で、そんな時代の大きな流れをガン無視したのがこのラファエル前派。時代の流れに逆らってる画家ってのはエネルギー感じますよね。印象派が変化へのエネルギーならラファエル前派は進化へのエネルギーみたいな。
この展覧会は全編に渡って神話、伝説、おとぎ話の世界を絵にしたものばかり。ギリシャ神話からご当地のアーサー王伝説、眠れる森の美女、等。

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「慈悲深き騎士」物語に出てくるイエスをドラマチックな感じに描いてました。その人ズバリを描くような聖人画は少なめな印象。過去の連中と同じことをしたいわけじゃないんだよ!前半エリアは「才気煥発の金髪美女」もよかったかな。

そしてここからの連作ラッシュが凄い。連作を描く画家は多いもののそれを集めて展覧会にするのって凄く難しいんだろうに、いくつもの連作をそっくり持ってきてくれてました。
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印象に残ってる連作が「ピグマリオンと彫像」の連作、6つも集まると物語性が凄い。自分で作った美少女フィギュアにガチ惚れしたから祈ってたら祝福受けて命を得たから結婚したという俺たちの夢の顕現みたいなストーリが凄い。
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一番好きだったのがこれ「メドゥーサの死 II」これも連作にして大作。緊迫感のある絵でした。

バーンジョーンズ以外誰も絵にしてないんじゃないの?みたいな主題の連作展が美術ファンからの満足度が高いのも頷けましたねー。残念ながら巡回展しないみたい。
しかしながら三菱一号の企画展は画家のチョイスが素晴らしいの一語!マネ、カンディンスキー、ウィジェルブラン、ロートレック、ルドン、バーンジョンーズと難しいところを選びながら見ごたえある企画展にしてます。ちなみに次はシャルダン。またこれもマニアックな…。